仏/pilotis。原義は、建物を支える「杭」の意。建物を支持する独立柱が並ぶ吹放ちの空間を指す。
1926年、ル・コルビュジェ とピエール・ジャンヌレが提唱した近代建築の五原則「ピロティ・屋上庭園・自由な平面・自由な立面・連続水平窓」の一つとして取り上げられ、地上階を自動車や外部歩行者などの動線に開放することを意図した。パリのスイス学生会館などがその例。
ポーチ
porch。使用範囲の広い語である。元来は、門・入り口・通路を意味する。
建物の本体とは別の、雨を避ける庇を持ち、壁体から突出している建物の入り口部を指したり、またコロネードのように、柱に支持された屋根を持つ吹放しの歩廊を指しても使われる語。更に、18世紀末には、米国や英国の住宅に、より簡単な形のものが用いられるようになり、柱に支えられて庇のある突出部は全てポーチと呼ばれるようになる。イタリアでは「ポルティコ」と呼ぶ。
マンサード屋根
英/mansard roof、米/gambrel roof。上部が緩勾配で下部が急勾配といった二重勾配を持つ屋根で、この空間を利用して屋根裏部屋が設けられる。仏国の建築家F.マンサール(自国の伝統の上に伊国の古典的様式を、採り入れ優雅なフランスバロックの様式を生んだ)の考案とされる。しかし、同種の形式は、16世紀中葉以前にも用いられている。「腰折屋根」「フランス屋根」ともいう。
ヴォールト
vault。ドームと同様にアーチを基本形とした屋根で、アーチを水平に押し出したカマボコの形状の屋根を「ヴォールト」と呼ぶ。
もっとも単純な形態は「筒型ヴォールト」で、半円或いは 尖頭アーチ を水平方向に連続させたものである。また、同一形状の筒型ヴォールトを二つ直交させた形状のものは「交差ヴォールト」と呼ばれ、筒型ヴォールトに比べて広い天井下の空間が実現できる。更に、交差ヴォールトの稜線をリブ補強した形状のものは「リブヴォールト」と呼ばれ、天井部分の軽量化が可能となり、後期ロマネスク建築に始まり、ゴチック建築において決定的な空間の特徴の一つになった。
ドーム・ドゥオーモ
英/dome、伊/duomo。或いは丸屋根は、建築における屋根形状の一つで、半球形をしたものをいう。アーチの頂部を中心に水平に回転させた形状のものがドームである。
構造的にもアーチと類似しており、自重その他の荷重を面内に沿って下部に伝えるため、面外に屋根を支える支柱や壁が基本不要であり、大空間を覆う屋根としている。且つ構造上の高さが必要で荘厳な空間が形成されることから、歴史的に古代ローマのパンテオンを始めとする宗教建築に多く用いられてきた。伊国の教会堂で、ドゥーモの上部に突出した小さな構造物である「クーポラ(キューポラ)」を持つものがあるが、後にクーポラが載った教会堂そのものをクーポラと呼ぶようになる。(日本では、かつて溶銑炉のことをキューポラと呼んだ)また、ローマ人はドームを半分にしたような「半円ドーム」を採用し、バシリカ の壁龕(へきがん)やエクセドラに使った。それが アプス に発展し、ロマネスク建築やビザンチン建築で、それぞれ独自に発展する。更に、ロシアの聖ワシリイ大聖堂や、ムガル建築の傑作とされるタージ・マハルの屋根は「玉葱ドーム」と呼ばれる。
ロンバルドバンド
Lombardo band。ロンバルディアバンドともいう。イタリアのロンバルディア地方で発生した「ロマネスク建築」に特徴的な壁面の装飾形式。
外壁の上部の縁の部分に規則的に付柱(ピラスター)を建て並べ、その上部をアーチで結ぶという簡単な方式から、更に各柱間に数個の小アーチ列を挿入したり、アーチの下の壁を ニッチ にするなど、幾分複雑な方式へと進む。教会堂の頭頂部または正面に適用されて、壁面にリズミカルな効果を与える。
リネンフォールド・パネル
linenfold panel。英国のチューダー王朝時代に行われた室内壁面の装飾形式。木製のパネルに、布の折り目のようなひだ模様が縦に刻まれたもの。
モールディング
moulding。刳り形、繰り形。建築・家具・器物などの縁の部分において、凹んで刳ってつくられた特徴のある装飾的な形。陰影を付加する表現手法の一つ。通常、同じ形の断面が連続する。我が国の古建築にも、面取り、斗繰、鼻繰、水繰、絵様といったモールディング手法が残されている。
コーナーストーン
cornerstone。クォイン(仏語の隅の意であるコアンから出た語)とも呼ばれる。隅石。煉瓦積 みや比較的小さな石を積んだ壁体において、出隅部分に隅部の補強のためにやや大きめの石を、表面が大小交互になるように配される。
迫石
voussoir(仏、ブーソアール)アーチを構成する楔形の石のことを指す。