アールヌーヴォー様式

Art Nouveau。19世紀末から20世紀初頭にかけて、欧州の各地に流行した芸術様式。この名称は、1896年に美術商ビングがパリに「アールヌーヴォー」という名の店を開いたのに由来するとされているが、過去の様式を拒否して新しい装飾様式をつくろうとする動きは、それより先にグラフィックアートから建築に至る芸術の各領域に現れていた。
英国のマッマードによる「レンの都市教会」のタイトルページク(1883)、V.オルタによるブリュッセルのタッセル邸(1892~93)の階段室など、いずれも曲線形を多用して情感豊かな形式をつくりだしたもので、この様式の典型とされている。その他、H.v.d.ヴェルデ、H.ギマールなどが知られており、更にスペインのA.ガウディの作品にも同様の傾向が認められる。ドイツ系では「ユーゲントシュティール」と呼ばれる。

アーツアンドクラフツ運動

arts and crafts movement。19世紀後期に英国で興った工芸運動。W.モリスは、工業生産の組織に抵抗するために、手工作の復活を主張したが、自らP.S.ウェッブと共同して自宅をつくり(1859、いわゆる「赤い家」)、またラファエル前派の作家達とともにモリス・マーシャル・フォークナー商会を設立して(1861)、生活用品のデザインを引き受けるなど、意欲的に活動してこの運動の中心となった。
1880年代には、W.クレーン、C.R.アシュビーらによりクラフトの協会や学校が設立され、その影響は広まった。機械生産を否定するものであるとはいえ、芸術と社会とを結合しようとする強い姿勢の故に、近代運動の重要な出発点と見られている。

ネオバロック様式

Neo-Baroque style。欧州の19世紀後半期に見られる芸術の一傾向で、バロック的な動感豊かな表現を目指すもの。新古典主義に対する反抗であり、回が・彫刻・工芸の各分野に見られる動向であるが、建築ではC.ガルニエによるパリのオペラ座(1861~75)がその代表例。

ネオルネサンス様式

Neo-Renaissance style。19世紀における「ネオグリーク」「ネオバロック」など一連の一種の歴史主義的動向のなかで、ルネサンス建築の復興を目指すもの。F.v.ゲルトナーやG.ゼンパーなどの作品にその例が見られる。

ヴィクトリアン様式

Victorian style。英国のヴィクトリア女王(在位1837~1901)治下の美術・工芸の様式。厳密には、特定の形態に基づく表現様式というよりは、同時代における一般的傾向を包括的に示す語として用いられる。
英国は史上最も輝かしい時代を迎えていたが、芸術的には、18世紀の萌芽した「ネオゴシック(ゴシックリヴァイバル)」の風潮が支配的であり、従来の医師や煉瓦に加え、鉄・コンクリート・ガラスといった、新しい工業的材料を積極的に採用したことも特徴といえる。

ピクチャレスク

picturesque。元来は芸術・生活備品などにおいて、他の時代・環境・流行などの雰囲気を感じさせる美的な感覚またはその様式を指すが、建築では特に、18世紀後半の英国で起こって19世紀中頃まで全欧や米国で流行し、我が国では概ね明治年間に行われた建築思潮の一つ。
それまでの古典主義的な威厳・壮大といったような建築美の理想に対して、田園・民家・異国趣味・非対称などの美を尊重するもので、建物はヴェランダを持ち木骨構造をとる場合が多く、主として中産階級の住宅・別荘、宣教師館、教会堂などに用いられ、我が国でも造家棟梁として招聘されていたW.アンダーソンらが幾つかの設計例を残した。工学寮の煉瓦造の教師館(1877)がその一例である。

ネオゴシック様式

Neo-Gotjhic style。一般に中世ゴシック建築の復興を目指す動きの様式。精神史的にはロマン主義の一つの形態であり、建築様式としては「ピクチャレスク」という概念に包まれる。
その起源は英国にあり、J.ナッシュが19世紀初頭に建てた住宅において、田園風とか不規則性といった情緒的側面を強調したのがその例である。C.バリ、A.W.N.ピュージンによるロンドンの国会議事堂(1840~1860)は最も有名である。この動向は、更に全欧各地および米国へと広まった。「ゴシックリヴァイバル」ともいう。

ネオグリーク様式

Neo-Greek style。一般に古代ギリシャ建築の復興を目指す動きのことで、18世紀から19世紀前半期にかけて起った新古典主義の一つ。英国のJ.ソーン、独国のK.F.シンケルはその代表建築家。「グリークリヴァイバル」ともいう。

ネオクラシシズム様式

Neo-Classicism style。新古典主義様式。18世紀に、バロックやロココの典雅な趣味に対する反動として興り、19世紀前半期まで続いた建築の動向で、古典古代の再認識を基盤とするもの。ロマン的古典主義と呼ばれることもある。
英国におけるパラディオ主義は、その一段階であるが、次いで、直接に古代ローマやギリシャを研究し、その造形原理を復興しようとする動きが現われた。仏国のJ.G.スフロ、英国のW.チェンバーズ、J.ソーン、更に19世紀における独国のK.F.シンケル、英国のR.スマークらがその代表的な建築家。絵画では、ダヴィッド、アングルらが古典主義ないしは新古典主義の代表作家とされる。

ジョージアン様式

Georgian style。英国で、18世紀から19世紀中頃に即位した、ジョージ1世から4世までの時代に流行した建築と家具のデザイン様式。その特徴は、バロック様式 や ロココ様式 に近しく、洗練された優美で繊細なデザイン。
この時期に起った産業革命により、英国では中産階層が増加し、このため家具の需要が伸び、数多く製造された。この様式の建築は、英国での流行後、移民入植により米大陸に伝えられた。外観のデザインは重厚で威厳が感じられ「ブリティッシュ・コロニアル様式」として、米東部を中心に広く定着した。