役物瓦のひとつで、雨仕舞のために隅棟の尻部分(軒先から見えない側)を覆う瓦である。立浪模様、獅子、鳩、植物などの飾りが乗せられ、装飾的な意味もあわせ持つ。入母屋屋根において降り棟が設けられていない場合において独立する形になる隅棟の尻に使用される。これに代わり漆喰や南蛮で塞ぐことも多い。隅棟が陸棟や降り棟に取り付くその接合部においても、熨斗を繋げる代わり用いられる。
「隅留蓋」と「隅巴蓋」とは区別する。
土間
屋内で、床が地面のまま、あるいは三和土(たたき)、砂利敷、石張、タイル張、モルタル塗、コンクリート押え等で地面高さ近くで仕上げられたもの。
土庇
地面に柱を立て、深く張り出させた庇で、独立した柱・桁で支えられている。吹放ちで床は張られず、農家住宅では庇下は縁側に代わる縁空間として農作業の場ともなる。茶室や数寄屋建築などでは玄関入口通路や歩廊とされる。
飛石
庭園内を歩きやすくするために配置された石で、景色としての意匠的な要素もある。普通、上面が平らな自然石であるが、切石や伽藍石(がらんいし=寺院等の礎石を転用したもの、またはそれに似せた石)、臼石など加工石を用いることもある。打ち方(地面への据え方)によって、直打ち・二連打ち、二三連打ち・千鳥打ちなどさまざまな打ち方がある。
土蔵造
骨組みは木造(木骨)で、外部は土壁で塗りこめて柱・梁などの木部を露出させない大壁とし、内部は木部が見える真壁とした構造で、壁厚は20~30センチほどになる造り方をいう。壁仕上げは漆喰塗とすることが多い。 窓や出入口は、観音扉、土塗の引戸・鉄扉などで塞ぎ、防火性があるため、土蔵だけでなく町家の店舗にも用いられた。
床の間
座敷飾りのひとつで、床柱・床框・床畳または床板・落掛・床天井等で構成される。掛軸と三具足(花瓶、燭台、香炉)を飾るなどの空間。室町無時代の上段または押板床を原形とする。
斗栱組物
柱頂部にあって、軒の出を支える架構装置の総称である。基本は、方形の「斗(ます)」と「栱(ひじき)」(すなわち「肘木」のこと)という、単純な二材の組合せによって構成される。
先ず、柱上に「大斗(だいと)」が据えられ、そこに水平に挺出(ていしゅつ)した「栱・肘木」を架け、その上に乗って次の「肘木」や「丸桁(がんぎょう・がぎょう)」を受ける「斗」が乗る、ということを何度か繰り返すことによって、深い軒を広く支える。その回数によって、「出組」「二手先」「三手先」などといった呼び方がある。「斗栱組物」の他、「尾垂木(おだるき)」と呼ばれる構造補足材や、「支輪(しりん)」「小天井(こてんじょう)」といった軒天の化粧材が加わることもある。
「和様」においては、このように柱上にのみ、この「斗栱組物」が据えられ「亜麻組(疎組)」と呼ばれるが、「禅宗様」では、柱間の「中備」にも、この「斗栱組物」を二、乃至三組用いられる。少しく賑やかな様相を呈するが、それを「詰組」と称する。
「大斗」らしき線彫のある家形埴輪(三重県石山古墳出土)があり、古墳時代にも、この形式が伝来していたものとも思われるが、広く行われるようになったのは、飛鳥時代に大陸の建築様式が渡来してから後のことである。当初は仏教建築や朝堂にのみ用いられたが、後に神社建築や住宅建築にも広がりを見せるようになる。