帝冠様式

(ていかんようしき)
西洋建築の様式・思潮
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昭和初期において、ナショナリズム(民族主義・国家主義・国民主 義・国粋主義などと訳され、種々ニュアンスが異なる)の台頭を背景として、無国籍または国際的な近代主義建築に対抗して主張された様式のこと。構造は、鉄筋コンクリート造または鉄骨造で、これに伝統的な屋根を被せるのを最大の特色とする。
一般的には、ナショナリズムとファシズム(国粋的思想を背景とした全体主義)が高揚した1930~40年頃のもののみを指す。具体的作品としては、神奈川県庁舎(小尾嘉郎、1928)、名古屋市庁舎(平林金吾、1933)、京都市立美術館(前田健二郎、1933)、軍人会館(小野武雄、1934)、東京帝室博物館(渡辺仁、1937)などが挙げられる。語源は、1918年に実施された国会議事堂コンペ入選案を見た下田菊太郎が「意匠変更請願」を表明するとともに、自ら「帝冠併合式意匠」と称する提案を、作品図面を添えて発表したことに始まる。その後、和風建築のデザインの象徴的要素としての屋根を洋風ビルに組み合わせ、新しい様式を創り出そうとする傾向を総称する名称として用いられるようになった。