表現主義

(ひょうげんしゅぎ)
西洋建築の様式・思潮
« Back to Glossary Index

Expressionism。美術のおいては、特に第一次世界大戦前の独国を中心に展開した近代美術の一傾向を指す。1905年に、ドレスデンでE.ケッヘル、E.L.キルヒナーらによって組織された「ブリュッケ」、1911年にミュンヘンでW.カンディンスキー、F.マルクらによって結成された「デア・ブライエ・ライター」のグループが、この運動の中心になった。
作品の傾向は一様ではないが、一般に主観的傾向を強め、生命の表出としての芸術を主張することを特色とする。建築における表現主義は、建築という性格上、当然、絵画や文芸の場合ほどその理念も表現も明瞭ではない。また大戦前後に活躍した建築家の多くは、一時期この動向を通過したともいえる。例えば、P.ベーレンス、W.グロピウスその他。大戦前では、H.ペルツィッヒとM.ベルクがこの傾向を代表する建築家として知られているが、戦後は、政情不安に基づく人生観の影響の故に、表現主義の建築は、一層多様に展開した。E.メンデルゾーン設計のポツダムのアインシュタイン塔(1920)、H.ペルツィッヒ設計のベルリンの大劇場(1919)などが、流動的な造形として有名。一方、人智学の創始者R.シュタイナーによるドルナッハのゲーテアヌムは、彼の精神主義的運動の具体的表現として注目される。一般に、表現主義の動向は、1930年代のナチスの台頭とともに解消されたが、具実文明の成熟してきた今日、再びこの主義の基本姿勢が検討されている。