「塔」とは、インドにおいて仏教とともに発生した構築物で、仏陀の遺骨を奉安し供養するために営まれた象徴的な意味での「墓」である。「塔」というのは、当時の口語バーリ語の「トフバ」が中国に伝来し「塔婆」と音訳され、略して「塔」となったものである。「塔」の文字は大陸古来の文字ではなく、六朝時代に異国の文物を紹介する際の必要性から案出された形聲文字といわれている。因みに、古代インドの文語サンスクリット語(梵語)では「スツゥパ」と呼ばれ、それが「卒塔婆(卒都婆)」に音訳されている。
飛鳥時代の「塔」は、伽藍における最重要建物で、常に中央軸上に配され礼拝の対象とされた。奈良時代に入り、しばしば中央軸の左右に「東塔・西塔」が配されるようになるが、東大寺では、それを伽藍の外に配するようになる。平安時代、密教の伝来にともない「多宝塔」が多く造られるようになり、神仏習合思想により神社境内にも建てられた。(かつて、住吉大社の「神宮寺」には「東西大塔」があり、神仏分離後、西塔は阿波切幡寺に移築され現存している)禅宗では、教義上あまり「塔」は重視されない。(曹洞宗・安楽寺の八角三重塔/国宝は別格)日蓮宗は設けるが、浄土宗・浄土真宗は稀にしか設けない。
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