多宝塔

(たほうとう)
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「多宝塔」は、平安時代の密教系寺院において、「多宝如来(過去七仏の一。宝生如来とも)」と「釈迦如来(不空成就如来とも)」の二つの仏像を並べて安置した「」のことである。「真言密教(東密)」では、一層目が方形で、二層目が円形をした、一般的によく目にする形式をとるが、「天台密教(台密)」では、一・二層とも方形の形式をとり、その例も少ない。延暦寺の法華総持院東塔や、かつて住吉大社の神宮寺にあり、神仏分離後に阿波の切幡寺に移築されたものなどが遺る。
尚、規模を大きくし、二層目の円形部(台密では方形)を支える柱を、第一層まで伸ばした形式のものを、区別して「大塔(だいとう)」と呼ぶことがある。弘法大師(空海)が建立した高野山金剛峰寺大塔は、RC造の復元であるので、根来寺大塔(国宝)にその形式が遺る。
かつては、石山寺(大津)、金剛三昧院(高野山)、慈眼院(泉佐野)の三基が国宝であったが、現時点、浄土寺(尾道)、長保寺(海南)のそれが加わり五基となっている。
余談である。長保寺は、本来「天台宗」でありながら「真言密教(東密)形式」のものであるのは、建立された南北朝期、「真言宗」であったからといわれる。
仏堂や仏塔において、軒下一間通りに取り付けてある庇状の構造物のことを「裳階(もこし)」という。「裳層」とも書く。(「裳」とは、上代、女性や僧侶が腰から下にまとった衣のことで、原義的に解釈すれば「裳腰」から転じたのかもしれない)「多宝塔」の初層も「裳階」であり、建築形式は「一重・裳階付」である。